未来は最高? /『The View Upstairs -君が見た、あの日-』

 

コロナ禍になり、東京公演は上演できたけど地方は全公演中止(逆も然り)、という悲しいことが多くなりました。今回のTVUも念のため東京も大阪も確保していましたが、あくまでも念のため…と思っていたところで大阪公演中止。仕方がないことですが、この作品をみたいと思っていた方全員に届かなかったことはとても悔しい。

 

2/1 『The View Upstairs -君が見た、あの日-』 @日本青年館ホール

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ニューオーリンズに実在した同性愛者クラブで起こった事件を題材にした舞台。現代を生きるファッションデザイナーのウェス(平間壮一)は不動産業者から廃墟と化した建物をしぶしぶ購入。クスリでハイになってカーテンを引っ張ると、一転、そこは70年代のゲイバーだった。様々な事情を抱えた個性的なメンバーが集まるその場所でウェスはとある青年(小関裕太)と出会い、惹かれていく…というお話。

 

以下箇条書きの個人的な感想。

 

・ステージ中央にピアノがあり、クラブのみんなでぐるぐる回したり、ピアノの上で歌い踊る派手なオープニング(♪此処が きっとパラダイス)でぐーっと惹き込まれた!これを見にきた!という気持ち。キャストみーんな歌唱力で殴ってくるタイプすぎてこの時点で最高。この後もピアノを使った演出がたくさんあり、本当にキャストの1人のような存在だった。海外では小劇場で客席も巻き込む形で上演されてたらしく、とても楽し気で羨ましい…

 

・そーちゃんのウェスくん、落ち目(?)のファッションデザイナーがあーでもないこーでもないとインスタライブの導入を考えてるところが可笑しくて可愛い。表面的にはニコニコしながらも痛みや苦しみを抱える不安定な役が本当に上手いよね…

 

・こせき…肩幅がしっかりしているので、どんな衣装で出てくるんだろう…と思っていたらデコルテ!!!!釘付けになりました。パトリックの持つ純真さと危うさが一目で分かるような表情や視線の落とし方が本当に好きだなと思った。まさかバーカウンターに腰掛けて煙草吸うクィアな役の小関裕太をみる日が来るとは…

 

・しょご…かわ……美脚。普通に女の子が出てきたのかと思ったらしょごたんだった。ウェスくんが喋ってる後ろでウンウン言いながら胸に手を当ててうなずくフレディ、めちゃくちゃめちゃくちゃ可愛い。オーロラ様に変身してからの圧巻のステージも本当に最高!跪きたい。オーロラである自分を愛し、プライドを持って生きるフレディも、そんな息子を誇りに思い支える母のイネズも、愛おしくてたまらなかった。

 

・オーロラのドレスを作っているときの今!めちゃくちゃ!!楽しい!!!なウェスくんキラキラで本当に可愛い。でもちゃんと後でヘンリに謝ってほしい。ヘンリ役の関谷春子さんの力強い歌声もめーちゃ好きだったな!!!どこにも居場所がない人々が、唯一自分自身で居られる場所を守るためにとんでもなく苦労してるんだろうな…みんなに見せる厳しくもあたたかい姿勢も素敵だった。

 

岡幸二郎さん、いつもお世話になっております!!!歌が上手いなんてもんじゃないパワフルなスーパーウィリータイム。ヘンリたちはまーたあの話してるよ…って感じだけど、なんかもうすべて救ってくれた。やっぱり言葉や音楽が持つ力ってすごいなとつくづく感じた。ずっと見ていたいしお花差し出したい…

 

・私は1回しか観劇できなかったので、東山義久さん演じるデールの全てを読み取ることはできなかったけど、たくさんの方の感想を読んで、誰よりも孤独を感じやすく、誰よりも誰かのぬくもりを欲していた人だったんだなぁと。とても難解な役だったのではと。毎公演デールと会話していたというお話がとても素敵です。

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・家族にはゲイであることを隠しているクローゼットのバディは、失うものなんて何もない(ように見える)自由なウェスくんが少し憎いんだろうな。これまで築いてきたもの全てを捨てることはできないけど、パトリックやクラブのことも大事だし守りたいと思う気持ちも本当。決して70年代の過去のひとの話ではなく、今も同じ苦しみを抱えるひとがいることを知っているからこそ、バディがウェスくんに向ける鋭い目の意味を、一部分だけだとしても分かってしまう。

 

「未来は最高!」この言葉のことばかり考える。相手が誰であっても愛するひとと手が繋げる、結婚できる…残念ながら数十年経った今でも、日本では同性婚は認められていないし、誰もが自分自身でいることを隠さないでいられる世界ではない。胸を張って未来は最高!と、誰もが言える日は来るんだろうか。1973年6月24日にニューオーリンズで起こった悲劇が、今の日本で上演された意味をやっぱり考えなくてはならないと思う。パンフレットの柿沼瑛子さんのテキストがとても分かりやすいので、ぜひたくさんのひとに読んでほしい…

ASMART | ミュージカル「The View Upstairs」

 

・簡単な問題ではないけれど、クィアな役をクィアの役者さんが演じる作品も増えてきたいま、これから日本でも色んな役者さんが様々な役を演じるところがみていきたいなと思う。トランスジェンダーの役者がクィアな役もシスヘテロの役も、何の圧もプレッシャーもなく、均等にチャンスが与えられた中で演じられるようになってほしいなと思う。もちろんストレートの役者がクィアな役を演じることも。そーちゃんのウェスくん、キラキラしていて大好きでした。また会えたらいいな…

 

・初日公演でそーちゃんのお誕生日公演というおめでたい日に観劇できて幸せでした!最後の最後でそーちゃんがこせきの手を引き、2人が寄り添った時に、えも言われぬ感情に…やっぱりアミューズ、ずっとラブ。